第82章 離婚を急ぐ理由は、彼なの?

中島美奈は胸の奥がざわつき、孝人のズボンの裾を掴む手にぎゅっと力を込めた。唇を半分噛みながら、必死に言い募る。

「当たり前よ! 孝人、私のこと信じてくれないの? こんなに長い付き合いで、私がどんな人間か一番分かってるのはあなたでしょ。どうして……疑うの?」

傷ついた響きを帯びた声。腫れて赤い頬に涙が伝い、いっそう無害でか弱く見える。

横尾孝人はその瞬間、あっさり心がほどけた。顔に張りついていた冷酷さが、霧みたいに消えていく。

南雲玲奈はそれを、黙って見ていた。

さっきまでの冷たい追及を見たときは、一瞬だけ――本当にこの男が中島美奈を追い詰めるのかもしれない、と信じかけた。

でも現...

ログインして続きを読む